秋田市の大滝山には温泉がある。ここの神乃湯はとても素朴で、鄙びていて、その「わび」やら「さび」に思わず心を奪われてしまう。湯煙の向こうには一条の滝。流れ落ちる滝をじっと見やりながら、湯船につかる。熱くなったら浴槽を出て、窓際の板の間にどっかと腰を下ろし、そこでまた滝と対峙する。床はぬるぬるとしているが、じっと座っていると、とてもいい檜の香りが立ち上ってくる。やがて身体からはぽたぽたと汗が滴り落ち、滝の流れと呼応していく。
やがてわたしは水を頭からかぶり、また湯の中へ。白き滝は天から流れ下り、白き湯気はゆらゆらとまるで天女のように漂いのぼっていった。